専門家のアドバイスcolumn
空き家となった実家~宅建士編
空家となった実家
ご両親が亡くなられた後に、空家になってしまった実家、取壊すのも売買するのも気が進まず、出来ればこのお家を活用したいと思われる方もおられると思います。
では、どんな活用法が考えられるでしょうか?
【投資型】
- ①一般的な居住用賃貸
- ②一般的な事業用賃貸(店舗、事務所等
【社会貢献型】
- ③社会福祉事業への活用(有償、無償
- ④地域のコミュニティスペース等公共性のある活用
【投資・ビジネス型】
- ⑤その他(シェアハウス賃貸、民泊ビジネス等)
投資型
①一般的な居住用賃貸
みなさんが一番イメージされやすい活用法だと思われますが、賃貸するに際して、家主(貸主)と賃借人(借主)との間で賃貸借契約を締結することになります。賃貸借契約において、賃料・
敷金・礼金・契約期間・退去時精算方法・特約等の取決めをすることになりますが、この賃貸借 契約に関しては、普通借家契約と定期借家契約とがあります。
普通借家契約とは、基本契約期間の定めはするものの、その基本契約期間到来後も更新
可能な賃貸借契約で、居住用賃貸においては最もポピュラーな契約スタイルです。この普通借家契約の注意点としては、賃貸借契約締結以降、家主(貸主)都合による解約に関しては正当事由が必要とされることです。例えば、実家の近くに転勤になったから実家に住みたい、又は、子供夫婦を実家に住ませてあげたいといったような理由では正当事由には該当せず、一度契約を交してしまうと、正当事由がない限り、借主からの退去申し出がなければお家を自由に活用することは出来なくなります。
定期借家契約とは、文字通り契約期間が定められた賃貸借契約で、この定められた期間 の到来により賃貸借契約は終了します(期間満了の1年~6ヶ月前までに貸主から借主に契約期間満了の通知を行うことは必要ではありますが)。
この定期借家契約の注意点としては、期間が定められているがゆえに、借主側からすると期間到来による退去が必要であるため、普通借家契約より人気がなく、入居が決まりづらい傾向があります。
又、上記の普通借家契約、定期借家契約、いずれにおいても共通していることは、借主に対して貸主責任が発生する為、通常、建物に関する雨漏り・白蟻等被害、付帯設備における漏水・故障等の際には貸主が対処しなくてはならず、その際には費用負担が発生するということを予め認識しておく必要があります。貸主が借主に対して直接対応する場合には労力を要することにはなりますが、賃貸借契約に関して不動産会社等に管理委託をしたりすればこのような場合の借主との窓口対応・現場対応・工事業者紹介等をしてもらえますので、貸主としての負担は軽減されます。
②一般的な事業用賃貸
立地・建物用途・建物規模・建物のこれまでの使用履歴等によっては、居住用ではく 店舗・事務所等の使用目的で借りたいという方に貸し出すという活用法も考えられます。
この場合においても、普通借家契約、定期借家契約に関しては居住用賃貸借契約と基本的考え方は同じですが、事業用賃貸の注意点としては、賃貸借期間中の補修責任割合、退去時精算、都市計画用途、借主の信用性に関することがあげられます。事業用賃貸の場合、建物を現状で貸して、退去時には現状の状態にもどしてもらう(現状復旧)という契約スタイルが一般的ですが、借主の使用目的に応じた室内改修工事(場合によっては、建物外観に関する改修工事まですることもあります)を伴うことが多い為、退去時に貸出前と同じ状態にもどすことが難しい場合も考えられます。又、居住用賃貸と違って、借主側で改修工事を実施したりすることが多い関係上、建物及び付帯設備に関する不良が発生した場合の修理・取替等に関して、貸主・借主のどちらがどう負担するのかという点を契約締結時に取決めしておくことが必要です。
都市計画上での規制にも注意が必要です。自治体が定めた都市計画での用途に適さない事業者に貸出ししてしまったりした場合、近隣クレーム等から借主が撤退せざるを得なくなり、せっかく契約締結しても早期解約となり、また一からスタートという事態にもなりかねません。どういう事業をする人が借りるのか、又、その借主の社会的・経済的信用性等に関しても、居住用賃貸以上に注意する必要があります。
社会貢献型
③社会福祉事業への活用
前述の「一般的な居住用賃貸」、「一般的な事業用賃貸」は適正賃料を得て有効活用する投資型側面が強いのに対し、賃料収入を主目的とするのではなく、せっかく思い入れのある実家だからこそ社会の役に立つ活用ができたらと思われる方もおられるのではないでしょうか。
立地・ご実家の状況等によっては、社会福祉事業を営む社会福祉法人等に活用の場を提供するという方法もあります。
《 有償(賃料有り)の場合 》
社会貢献できる活用が出来たらとはいえ、相場どおりとまではいわずとも多少の賃料
は頂きたいという方は、当方側の意図に基づいた賃貸借契約を借主である事業者側と締結することになります。注意点としては、契約前に契約内容に関してよく借主側と打ち合わせをして契約条件を決定することです。せっかく献身的気持ちで割安な賃料にて貸しているのに、通常の賃貸借契約同様の貸主責任を負わされて、なにかのときの出費のほうが気になるというようなことにならないようにしたいものです。
《 無償(賃料無し)の場合 》
上記の有償賃貸型ではなく、無償(賃料無し)にて、社会福祉事業を営む場として社会福祉法人等に貸す場合には、そのメリットとして、対象不動産に関する固定資産税が非課税となります。実家を取り壊すのはもったいないが、賃料を頂くほどの手を入れたり貸主としての責任とかは出来るだけ負いたくはない、又は、現時点では活用予定も特にないのでお家をそのままにしておくよりは管理代わりに誰かに活用してもらえたらといった場合には、社会貢献できるこのタイプの活用を検討されてみるのも良いかもしれません。
④地域のコミュニティスペース等公共性のある活用
現代においては、昔のように地域での交流がはかられておらず、人間関係が希薄になってきている地域もあるように思われます。そのようなエリアにおいて老若男女問わず、地域の人たちが自由に交流をはかれるようなコミュニティスペースとして、ご実家を提供されてみませんか。
投資・ビジネス型
⑤その他(シェアハウス、民泊、etc)
《 シェアハウス 》
昨今、新しい賃貸スタイルの1つとして、シェアハウスとして賃貸するという活用法もあります。メリットとしては、居住用賃貸として数人の借主に対して貸出する為、予定の人数分すべての入居が得られれば、一人の借主に対して貸したときより大きな賃料収入が見込めるケースが多いことです。注意点としては、複数の借主が同じ建物内で生活し、台所・トイレ・浴室等を共用することになる為、借主間におけるトラブルが発生する可能性もありますので借主選定に関してはとりわけ通常の居住用賃貸よりも注意が必要です。
《 民泊ビジネス 》
昨今の日本への外国人旅行者急増に伴い、今日、民泊ビジネスに関する話題がなにかと
メディアで取り上げられています。一部の民泊施設における近隣住民とのトラブルや諸問題の発生等もあり、政府は民泊事業に対する規制を強化しました。民泊事業を営む為には許可取得が必要となりますが、どのような形式での民泊事業を営みたいのかによってどのタイプでの免許取得が必要なのか、さらには自治体によってもそれぞれ細かい規定が異なるようですので、興味のある方は、ご実家の所属する自治体での規定をよく確認の上、検討する必要がありそうです。
家族の介護とこれからの住まい
両親や家族が介護施設等に入居して、実家が空家になってしまったが、現時点では実家の売買・取壊し等は考えづらいという場合、その活用法に関しては「空家になった実家」ページを参照下さい。
ここでは、ご実家を賃貸活用する場合に、貸主として直接管理するのでなく、不動産会社等に管理委託をする場合に関して少し触れてみます。
不動産会社等への管理委託に関して
建物を第三者に賃貸する場合に、対象不動産に関して不動産業者等と管理委託契約を締結して、賃貸運営する形式です。管理委託をする関係上、通常は管理業務に伴う報酬(一般的に管理料と言われているものです)を管理委託先業者に支払うことになります。その報酬額は管理受託する業者、又は、管理委託の内容によっても異なる場合がありますので、管理委託を考えられる際はお願いしたいとお考えの不動産会社等にご確認下さい。
管理委託内容に関する詳細はかなり広範囲なお話になりますので、ここでは、管理委託された場合の貸主としてのメリットといえる点をご紹介します。
☆管理委託した場合のメリット・・
- ①賃貸募集窓口になってくれる。
- ②借主からの申込受付・入居審査から賃貸借契約締結等までの業務をほぼ行ってくれる
(審査自体は今日、管理会社指定の保証会社等にて審査されることが多い) - ③賃料相場・賃貸契約条件等に関するアドバイスがもらえる
- ④賃貸借契約中における設備故障・漏水等の窓口対応・現場対応・工事業者の手配等を行ってくれる。
- ⑤借主からの家賃回収をしてもらえる。
(家賃滞納があった場合でも、家主から直接借主に対して督促をしなくてよい) - ⑥毎月の賃料送金を管理会社から受けることが多く、賃料明細やその他管理上で発生した費用の領収書等も毎月所定のタイミングで郵送される為、確定申告の際にやりやすい。
- ⑦借主退去の際の清算業務を行ってくれる
- ⑧町内会、近隣との連絡窓口になってもらえたりする。
上記のようなメリットを考えると、貸主として直接に借主に対応する手間・負担を考えた場合、管理業務報酬という費用負担は発生するものの、管理委託をしたほうが貸主としての負担はかなり軽減されるはずです。とはいえ、管理業務を行っている不動産業者等は多数ありますので、大事な不動産を安心して任せることができる業者さんを選びたいものですね!